燦々と降り注ぐ太陽に、キラキラと青く光る地中海。町に入れば石畳の古い町並み。新鮮な美味しい海産物…ここは地中海とホーリーランドを結ぶ港町、ヤッファ。
ヤッファはホーリーランドにおいてとても重要な町で、キリスト教伝道の出発の地でもあります。イエスの処刑後、弟子ペトロはここヤッファに滞在していました。それを記念した美しい教会や、ペテロが宿泊していた場所などがあり、現在でも多くの人々が観光に訪れます。
ヤッファの旧市街は18世紀の建物が並び、趣深い景色が広がります。ヤッファを散策すると中世にタイムスリップした気持ちになりドキドキ!します。現在旧市街はアートの町になっており、アーティストが自分のアトリエを構えて活動しています。私はヤッファの可愛いアトリエを観てまわるのが大好きです。
いつの時代もこの地は取り合いになるほど重要な港で、ナポレオンもこの地を攻略しました。それを記念しヤッファにはナポレオンの像が点々と飾ってあります。
ちなみに、この地についての一番古い記述は、古代エジプトの時代、紀元前1400年頃。ヤッファを巡る攻防があったことがエジプトの碑文に記されています。この攻防ではギリシャ神話にでてくる「トロイの木馬」と非常に似た戦法が使われました。この港の積荷の中に兵士を忍ばせ、奇襲作戦を行ったそうです。ヤッファの戦法と「トロイの木馬」は、何か関係があるのでしょうか? 偶然の一致が謎を呼びます…!
ギリシャ神話、といえばヤッファの港から「アンドロメダの岩」という遺跡が見えます。この岩はギリシャ神話の少し怖いエピソードに関係しています。王妃カシオペアが自分の娘であるアンドロメダの美しさを自慢します。それに怒った神が海に海獣を放ち、海獣や津波で港町が襲われてしまいます。美しいアンドロメダはこの災いを治めるために、自分が生贄になることを決意します。彼女は港から離れた沖の岩に鎖で繋がれ、怖くてドキドキ!しながら海獣をジッと待ちます。実は、そのアンドロメダが繋がれていた岩こそ、ヤッファの”岩”だと伝えられています。今でもその岩は強い波に打ち付けられています。こんな場所に繋がれていたかと思うと、とても不憫に思います…。気になるアンドロメダのその後は、英雄ペルセウスに無事に助けられ彼と結婚することとなります。これにはホッとしました。
ヤッファはエルサレムの発展にも貢献しています。現在でも多くの人々が集まるユダヤ教の聖地「嘆きの壁」。ここにはユダヤ教の中心となる神殿が建っていました。この神殿を作る際にも、ヤッファ港から大切な材料を調達していました。その材料とは、”レバノンの杉の木”です。レバノンの杉の木は太古より”聖なる神木”として崇められており、大変高価なものだったと言われています。ユダヤ教以外にはエジプトでも重宝されており、ツタンカーメンの棺もレバノンの杉の木から作られていました。現在もレバノンの国旗には杉の木が描かれています。しかし残念なことに、太古の時代から大量に伐採されてきたため、現在杉の森は絶滅寸前。レバノンの大地は枯れ、杉の木は全土にわずか数千本しか残っていないそうです。環境破壊の問題は太古から続いています。とても考えさせられます。
港をテーマにすると、外国との関わりに目を向けるので幅広く学べました。レバノン杉は残念ながら絶滅寸前ですが、ヤッファから見える地中海の姿はおそらく古代から変わっていません。地中海を眺め、ヤッファの濃厚な歴史に思いを馳せてみましょう!
※ラジオエッセイ “ドキドキ!HOLY LAND STORY for you(遊)” より引用
Essay by 松井葉月 Hatsuki Matsui