ヘブロン / Hebron

エルサレムから車で南に1時間。この町の旧市街はエルサレム旧市街よりも、更にズッシリとした空気感に包まれます。監視する兵士、閉ざされた店舗、人々を保護する金網の天井…。悲しみと祈りが交錯する場所、ここはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の重要な聖地、ヘブロン。

 

ヘブロンはパレスチナ自治区の南部に位置する都市です。しかし、大きな銃を担いだイスラエル人兵士が鋭い目をしてパレスチナ人を監視しています。一体、ここで何が起きているのでしょうか?

 

ヘブロンには「マクペラの洞窟」という、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教にとって非常に重要な聖地があります。マクペラの洞窟には旧約聖書にてメソポタミアの地からこの地にやってきた彼らの祖先、アブラハムが眠っています。

 

アブラハムは妻のサラが亡くなった際、彼女を葬るために、この地にあったほら穴のある畑を銀貨を払って購入しました。この時からこの地はアブラハム所有の墓地とされ、彼から4代にわたって一族が埋葬されました。その中には天使とレスリングをして”イスラエル”という名を与えられたヤコブもおり、ここに埋葬されているのは彼らにとって礎になる者達です。

 

現在、このほら穴の最下部は、冥界、もしくはエデンの園に繋がっていると言われています。覗き込むことはできますが、下部には入ることができません。真っ暗なその先に何があるのか、想像するだけでドキドキ!します。

 

しかし、このミステリアスで重要な聖地を巡って争いが繰り広げられています。ヘブロンはパレスチナ自治区と定められたものの、イスラエル人の一部は国際法に反する入植を繰り返しています。現在、ヘブロン旧市街は入植地に囲まれてしまいました。パレスチナ人区域は入植してきたイスラエル人から嫌がらせを受け、上から石やゴミ、酷い時にはペットボトルに入れた尿を投げつけられます。そのため、この地の天井は金網で保護されています。

 

酷い、悲しい状況ですが、パレスチナ人が対抗すると、イスラエル兵から撃たれてしまいます。かつてはお土産屋で賑わっていたマクペラの洞窟付近も現在はゴーストタウン化しています。

 

一方、旧市街から離れてみるとヘブロン全体はパレスチナ最大の経済都市であり、ヘブロン産の家具、紙、繊維、工業品等がパレスチナ経済の半分を支えています。イスラエル人の入植さえ無ければ、彼らはもっと活発に豊かな日々を送ることができるでしょう。

 

ヘブロンに来ると遺跡の重要さは勿論ですが、この町の異様な雰囲気に圧倒され、パレスチナ問題について深く考えさせられます。ヘブロン、および全パレスチナ自治区に平和が訪れることを心より願っています。

ドキドキfor you!

 

※ラジオエッセイ “ドキドキ!HOLY LAND STORY for you(遊)” より引用

Essay by 松井葉月 Hatsuki Matsui

 

 

 

ヘブロンを巡る旅

ヘブロンには「マクペラの洞窟」という、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教にとって非常に重要な聖地があります。マクペラの洞窟には旧約聖書にてメソポ…

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