ラジオエッセイ: ホーリーランドの植物
雨期が過ぎ、地面はたっぷりと水を貯えました。
柔らかい日差しに包まれた暖かな陽気。茶色い砂漠の山々には緑が芽吹き、色とりどりの花が咲き始めます。
緑の絨毯がひかれた丘には、羊の群れが横切り、ゆったりとした時間がながれます。
ホーリーランドに短い春がやってきました。
この地は、旧約聖書にて「乳と蜜の流れる、カナンの地」と呼ばれています。
普段は乾燥した砂漠地帯なので、何故この乾いた土地が魅力的に描かれるのか不思議に思っていました。
しかし春が来れば、納得。真っ赤なアネモネ、ピンクのシクラメン、黄色いデイジーが咲き乱れ、まるで絵の中にいるような景色が広がります。
春に公園を訪れると、木々には日本の桜にそっくりな、うすピンクの小さな花が満開です。
こんなに離れた土地で桜を見ることができるなんて!と嬉しくてドキドキしましたが、じつはこのピンクの花は、桜ではなく、アーモンドの花です。
旧約聖書でも、モーセの兄のアーロンの杖に、神のご加護でアーモンドの花が咲くエピソードが記載されています。そのためこの地ではアーモンドの花が咲くということは、神に見守られていることの象徴として大切に捉えられています。
エルサレムではザクロをモチーフとした可愛いお土産が沢山売っています。
ユダヤ教においてザクロは、豊穣や愛の象徴。
イスラエル中のあちこちで、沢山のザクロの木を見ることができます。神聖な植物として捉えられており、新年には幸福を願ってザクロを食べます。
アダムとイブが食べた禁断の果実について、日本ではリンゴのイメージが強いですが、実はザクロという説もあります。ちなみに、ブドウやみかんやトマトや小麦という説もあり、禁断の果実は、謎に包まれています…。
パレスチナでは見渡す限りのオリーブ畑が広がっています。秋には実がつき、みんなでオリーブ詰みをします。
オリーブ詰みは楽しいですが、量が多くて大変です。
しかし、新鮮で美味しいオリーブオイルを分けてもらえるので、とてもやり甲斐があります!
旧約聖書に記されている、ノアの箱船から鳩を放つとオリーブの葉を咥えて戻って来た、というエピソードから、オリーブの木は鳩と共に平和の象徴となりました。
聖書の時代から人々を支えてきた植物が、今も変わらずに願いが込められ大切にされているなんて、ロマンチックでドキドキ!しますね。
訪れる際は、ホーリーランドの植物にも目を向けてみてくださいね!
ドキドキfor you!
※ラジオエッセイ “ドキドキ!HOLY LAND STORY for you(遊)” より引用
Essay by 松井葉月 Hatsuki Matsui